
AI英会話の読み上げを外から細かく操る記法がSSMLです。
聞き取りやすさを決めているのは、話し手の声質よりも「どこで止まるか」と「どの速さで読むか」でした。
この2つを指定できるのがSSMLで、音声合成の部品を売っている側の開発者向けドキュメントに、使えるタグの一覧があります。
この記事ではGoogle Cloud Text-to-Speech のドキュメントに載っているタグだけを根拠に、指定できることと指定できないことを分けました。
扱うのは仕組みの話だけで、特定のアプリを勧める内容は入っていません。
取得日は2026年9月25日。
仕様は改定されるため、タグ名と数字は必ず公式の表で読み直してください。
【結論】AI英会話のSSMLは、読み上げを外から操る5つのタグ
先に結論から書きます。
AI英会話のSSMLで実際に効くのは、間・速さ・読み方・発音・強調の5系統だけ。
- 間を作る=break(沈黙の長さを決める)
- 速さと高さを変える=prosody(rate・pitch・volume)
- 読み方を決める=say-as(数字・日付・記号の解釈)
- 発音を上書きする=phoneme・sub(固有名詞の読み)
- 強弱を付ける=emphasis(声の張り)
逆に、SSMLで指定できないものもはっきりしています。
感情そのものを数値で指定するタグはGoogle のドキュメントの表に無いため、悲しそうに読ませたいという注文は直接は通りません。
できるのは、遅くする・低くする・間を長くするという物理的な操作の組み合わせだけ。
この差が分かっていないと、思ったとおりに読み上げが変わらない理由が最後まで見えてきません。
順番に1つずつ分解します。
AI英会話のSSMLとは何か|音声合成に渡す指示書
SSMLの立ち位置
AI英会話の画面で文字が音になるまでには、文章を音声合成の部品へ渡す工程があります。
このとき渡すものが、ただの文字列なのか、印の付いた文字列なのかで結果が変わる。
印の付いた形がSSMLで、XMLと同じ書き方でタグを入れ子にします。
いちばん外側は speak というタグで囲み、その中に本文とタグを混ぜて書いていく形です。
つまりAI英会話のSSMLは読み上げ機に渡す指示書であって、英語の教材そのものではありません。
効く場所と効かない場所
SSMLが効くのは、文字を音に変える工程だけ。
こちらが話した英語を文字にする工程(音声認識)には、SSMLは一切関係しません。
ここを混同すると、認識されない原因をSSMLで直そうとして時間を溶かします。
| 工程 | SSMLが効くか | 何で決まるか |
|---|---|---|
| こちらの声を文字にする | 効かない | 録音条件とモデル |
| 文字をAIが読む | 効かない | 指示文と履歴 |
| 返事を音にする | 効く | SSMLとAPIの設定 |
表のとおり、SSMLの守備範囲は最後の1工程だけです。
残りの2工程は、まったく別の部品が担当しています。
音を作る工程そのものの仕組みは、英語の音声合成の記事で先に分解しました。↓

その工程の中で、どこまで細かく注文を付けられるかという話が、この記事の中身です。
AI英会話のSSMLで間を作る|breakが決める沈黙の長さ
break の書き方
いちばん使い道が多いのが break です。
break は「ここで何秒止まる」という指示だけを持つタグで、本文を囲みません。
時間で指定する書き方と、強さで指定する書き方の2通りがあります。
- 時間で指定=time=”500ms” のようにミリ秒か秒で書く
- 強さで指定=strength=”weak” から “x-strong” までの段階で書く
- 何も書かずに break だけ置くと、既定の長さが入る
強さの段階には、間を消す指定(strength=”none”)まで用意されています。
指定しなければ、文の切れ目に自動で間が入る形になる。
学習で効く使い方
シャドーイングの練習音を作るとき、この break がそのまま道具になります。
文の途中に500ミリ秒の間を入れれば、追いかける側が息を吸う場所ができる。
同じ英文でも間の場所を変えるだけで難易度が変わるので、速さを落とす前に間を足すほうが自然な音になります。
逆に間を全部消すと、音は速くないのに追いつけない不思議な英文になります。
人が聞き取れるかどうかは、1分あたりの語数ではなく、区切りの数で決まっている。
- 意味のかたまりの後ろに300〜500ミリ秒の間を置く
- 息継ぎをしたい場所に、もう1つ長い間を置く
- 間の場所だけを変えた2本を作って聞き比べる
自動で入る間は、文法的な切れ目にしか入らないところが弱点です。
学習用に「意味のかたまり」で切りたいなら、自分で break を置くしかありません。
AI英会話のSSMLで速さと高さを変える|prosodyの3つの値
rate・pitch・volume
prosody は本文を囲むタグで、囲んだ範囲の読み方を変えます。
指定できるのは、速さ(rate)・高さ(pitch)・音量(volume)の3つ。
| 属性 | 書き方の例 | 効き方 |
|---|---|---|
| rate | slow・medium・fast・80% | 読む速さが変わる |
| pitch | +2st・-2st・low・high | 声の高さが変わる |
| volume | loud・soft・+6dB | 音の大きさが変わる |
rate はパーセントでも書けるため、80パーセントのような中間の速さを作れます。
ここで大事なのは速さを落としても発音の作り方は変わらないという点です。
人がゆっくり話すときは、母音を伸ばして子音を丁寧に置き直します。
合成音声の rate はそこまで作り替えず、全体を等しく引き延ばす方向に動く。
だから遅くした音のまねは、遅く話す練習にしかならない。
どこまで下げると崩れるか
rate を極端に下げると、単語の切れ目が不自然に伸びて聞き取りにくくなります。
ドキュメントには下限と上限の目安があるので、そこを越えない範囲で使う。
- まずは90パーセント前後から試す
- 崩れたと感じたら5パーセント刻みで戻す
- pitch は下げすぎると子音が埋もれる
volume はイヤホンの音量つまみと役割が重なるため、無理に触る必要はありません。
3つのうち学習で本当に効くのは rate と、前の章の break の2つだけです。
AI英会話のSSMLで読み方を決める|say-asが直す数字と記号
say-as が要る理由
数字や記号は、文字のままでは読み方が1つに決まりません。
1990 は「千九百九十」とも「ナインティーン・ナインティ」とも読めます。
どちらで読むかを指定するタグが say-as です。
| interpret-as の値 | 何として読むか |
|---|---|
| cardinal | 数として読む |
| ordinal | 順番として読む |
| characters | 1文字ずつ読む |
| date | 日付として読む |
| time | 時刻として読む |
| telephone | 電話番号として読む |
say-as を付けないと読み上げ機の推測に任せることになり、同じ文でも読み方が揺れます。
学習で困る場面
数字の聞き取りが苦手な人の多くは、数字そのものではなく読み方の型を知らないだけ。
年号・電話番号・小数の3つは、英語では別の型で読まれます。
- 年号は2桁ずつに割って読むことが多い
- 電話番号は1桁ずつ読み、区切りで間が入る
- 小数は point を挟んで読む
say-as でこの3つを作り分ければ、型ごとの練習音が自分で用意できます。
聞き取れない原因が型の知識だったと分かるのは、たいていここです。
逆向きの話(聞いた英語を文字にするときの記号)は、句読点の記事にまとめました。↓

入口と出口で、記号の扱いがまったく別の仕組みになっているのが分かります。
AI英会話のSSMLで固有名詞を直す|phonemeとsubの使い分け
phoneme は音を上書きする
人名や社名は、つづりから読み方を推測できないものが多くあります。
phoneme タグは、発音記号を直接渡して読み方を上書きするタグ。
alphabet に ipa を指定すれば、国際音声記号で書けます。
注意点は発音記号を1文字でも間違えると別の音になるところです。
sub は文字を差し替える
sub タグは、表示は元のまま、読み上げだけ別の文字列に置き換えます。
略語を正式名称で読ませたいときに向いている。
- phoneme=発音記号で音を直に指定する(細かいが壊れやすい)
- sub=読ませたい文字列に差し替える(ざっくりだが安全)
迷ったときはまず sub で試すのが早い順番です。
どちらも、話し手の発音を直す機能ではありません。
読み上げ側の音を直す道具なので、自分の発音の採点には影響しない。
ここを勘違いして、採点が甘いのを phoneme で直そうとする相談をよく見かけます。
AI英会話のSSMLで強調する|emphasisが当てにならない場面
emphasis は、囲んだ部分を強く読ませるタグです。
level には strong・moderate・reduced の3段階を置けます。
ただしドキュメントの注意書きのとおり、効き方は声の種類によって変わる。
同じ strong でも、声を差し替えると強さが変わります。
英語の強勢は、音量ではなく長さと高さの組み合わせで作られているためです。
確実に強調したいなら、emphasis だけに頼らず prosody と break を併せて使います。
- 強調したい語の前に短い break を置く
- その語を prosody で少しゆっくりにする
- 必要なら emphasis を重ねる
この3点セットにすると、声を変えても崩れにくくなります。
英語のリズムを耳で覚える練習では、この作り方がいちばん役に立つ。
AI英会話のSSMLが効かない3つの理由
入口が受け付けていない
1つ目は、そのサービスがSSMLを受け付けていない場合です。
音声合成の部品側が対応していても、アプリの入力欄が平文しか渡していなければ、タグはそのまま文字として読まれる。
タグが声で読み上げられたら、それは受け付けていないという答えです。
タグの入れ子が壊れている
2つ目は、XMLとして壊れている場合。
閉じ忘れや、属性の引用符の抜けがあると、全体が無効になります。
1文字の間違いで指示が丸ごと無視されるのは、XMLの仕様どおりの動きです。
声の種類が対応していない
3つ目は、声の側が対応していない場合。
同じ言語でも、声の種類によって効くタグの範囲が違います。
- 入口=アプリがSSMLを渡しているか
- 形=タグの入れ子とクオートが正しいか
- 声=別の声に替えると通るか
指定が通らないときは、タグを疑う前に声を1つ替えて試すのが早い切り分けになります。
3つとも、原因の切り分けは数分で終わる。
AI英会話のSSMLをシャドーイングに使う手順
ここまでのタグを、学習の手順に落とします。
- 同じ英文を、rate 100・90・80パーセントの3本で作る
- 意味のかたまりの後ろに break を300ミリ秒だけ置く
- 強勢を置きたい語の前に短い break を足す
- 3本を順番に追いかけて、崩れる場所を記録する
崩れる場所は、たいてい同じ子音の連なりか、弱く読まれる機能語です。
自分が崩れる場所が分かると練習する量ではなく練習する場所が決まります。
ここまで全部、音声合成側の設定だけで用意できる。
自分の発音を測る話ではないので、採点の機能とは切り離して考えてください。
練習そのものの設計は、シャドーイングの記事のほうが詳しく分解しました。↓

この記事は、その手前にある「音の作り方」だけを引き受けています。
AI英会話のSSMLが使えるサービスの見分け方
使う側からは、SSMLに対応しているかどうかが見えにくいのが実情です。
判断できる手がかりは3つ。
| 手がかり | 見る場所 | 分かること |
|---|---|---|
| 読み上げの速さを変える設定 | アプリの設定画面 | rate 相当の指定が通っている |
| 一時停止の調整 | 再生画面 | break 相当の指定が使える |
| 読み方の指定 | ヘルプや開発者向け資料 | SSMLの受け口があるか |
設定画面に速さのつまみがあるだけなら、内部で prosody を使っているとまでは言えません。
確実なのは、開発者向けの資料にSSMLの受け口が載っている場合だけ。
逆に言えば自分で音を作りたいなら音声合成のAPIを直接触るほうが早いという結論になります。
学習者向けアプリの多くは、この指定をあえて隠しています。
選べる幅を狭くしたほうが、迷わずに使えるからです。
AI英会話のSSMLで確かめた一次情報の置き場
この記事で読んだ場所を残します。
- Google Cloud Text-to-Speech のドキュメント=SSMLで使えるタグと属性の一覧
- OpenAI の音声関連ドキュメント=テキストから音声を作る入口の説明
- Google Cloud Speech-to-Text のドキュメント=認識側の工程(SSMLの対象外である確認)
読んで分かったのは、タグの一覧は公開されている一方で、声ごとの効き方の差は表になっていないことです。
つまり効き方の差は自分で試すしかないという状態が残っています。
取得日は2026年9月25日。
仕様は改定されるため、数字とタグ名は必ず公式の表で読み直してください。
AI英会話のSSMLのよくある質問
自分の発音は直るのか
直りません。
SSMLは読み上げ側の音を作る記法で、話し手の発音には触れないためです。
感情を指定できるのか
Google のSSMLの表に、感情を直接指定するタグはありません。
- できる=速さ・高さ・音量・間を数値で指定する
- できない=うれしそうに・悲しそうにと言葉で注文する
- 近づけ方=遅く・低く・間を長くを組み合わせる
それらしく聞かせるところまでが、いまの限界です。
アプリの設定だけで足りるのか
速さを変えたいだけなら足ります。
間の場所を自分で決めたいなら、SSMLを受け付ける入口が必要。
英語以外でも使えるのか
使えます。
- 言語ごとに使える声の一覧が別にある
- 声ごとに効くタグの範囲が違う
- 同じタグ名でも効き方の強さが変わる
ただし対応する範囲は言語と声によって違うため、公式の表で確認してください。
どこから練習に取り入れるか
break だけを試すところから始めるのが、いちばん手数が少ない入り方です。
まとめ|AI英会話のSSMLで押さえる3点
最後に3点だけ残します。
- SSMLが効くのは「文字を音にする工程」だけで、認識と採点には関係しない
- できるのは間・速さ・読み方・発音・強調の指定で、感情の直接指定はできない
- 効かないときは、入口・タグの形・声の種類の3つを順に切り分ける
この3つが分かっていれば、読み上げが思ったとおりに動かない理由は自分で切り分けられます。
声・話速・発音の上書きまで、公式ドキュメントで分解した記事です。
音の作り方から読み直せる記事
あわせて読みたい記事も置いておきます。
抑揚とリズムが採点でどう測られるかは、韻律の記事にまとめました。↓

参考文献も以下にまとめます。
- Text-to-Speech ドキュメント(Google Cloud 公式サイト)
- Speech-to-Text ドキュメント(Google Cloud 公式サイト)
- Text to speech ガイド(OpenAI 公式サイト)
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